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2016/07/05
2016/07/05

グローバルインバウンドのその先―海外における有効なプロモーション設計

前回は、幅広いニーズに応えるべく、ツアー向けと個人向けのインバウンドとアウトバウンドの四つの軸でマトリックスを描き、違う戦略を綿密に構築することがビジネス展開への成功のカギだとした上で、その基礎となる様々な分析資料を回顧した。

 

それから2ヶ月ほどしか経っていない現在、インパクトの大小はあるものの、熊本地震や中国の政策変更によって影響を受けた業種や地域が4月末頃から顕著化し始めている。環境がダイナミックに変化する市場の中で、カスタマイズしたプロモーション戦略を描けないようでは、マーケットシェアを先取り出来ないだけではなく、無駄な投資に終わってしまうことが多いのは確かだ。

 
 

インバウンド市場の分岐点~成長のスローダウンにこそ成長のポイント

2016年5月分の訪日外客数(推計値) が、日本政府観光局(JNTO)から発表された。

 

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引用元:日本政府観光局(JNTO)より

 

2016年5月分の訪日外客数(推計値)は、航空路線の拡大やクルーズ船の寄航増加に伴い、前年同月比15.3%増となり、189万4千人に上った。

 

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5月の月間訪日外客数は過去最高記録を更新し、インバウンド市場にとっては喜ばしい数値に取られがちだが、データを2014年まで遡って読み解いでみると、「前年同月比伸び率」は、2月から低下し始めていることが分かり、短期間で急成長をなし遂げてきたインバウンド市場に鈍化が見え始めていることが分かる。

 

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訪日外国人の国別ランキングを見ると、中国、台湾、韓国が変わらず上位3カ国を占め、インバウンドを語る上で無視できない対象市場であることは明白だ。ただ、全体数が伸びている中、韓国が単月ながらもマイナス成長しているという点は、今後の経過をモニターする必要がある。

 

急ピッチで進んできたインバウンド市場の中で、ある程度の事をしていれば今まではビジネス成長が期待できたのに対し、これからはより細かなプロダクト分析やプロモーション設計が必要となることは確かだ。

 
 

これまでと違うインバウンド戦略~マーケットインの発想で来日外国人を分析

今、市場を見渡してみると、データを読み解き、プロモーションの対象となるプロダクト、そしてその対象となる地域、国の特性を精確に捉え、マッチングやプロモーションに活かされているとは言えない。

 

先日、とある大手新聞社の地方紙を見て、全体像を見ていないような書きぶりに少々驚いたのだ。大まかな内容は以下のようだ。
「クルーズ船の乗客の消費動向は、お土産や買い物への消費が全体の6割を占め、外国人の買い物は地元の伝統工芸品などが多く、家電製品や日用品を大量購入する「爆買い」はほとんど見られなかった」という。
調査の対象となったのは、昨年8~9月に青森港に寄港したクルーズ船6隻の日本人と外国人の乗客・乗員計2,155人。外国人の居住地別では欧州が16.4%と最多で、次いで北米や中南米が15%、豪州14.%、アジア2.2%−−などの順だった。

 

前回の記事をお読みなった方は、もうお気付きではないだろうか。そう、曝買いをするのはアジア系、特に中国人であり、欧米系はお買物より歴史・伝統・文化の体験に高い興味を示しているというデータがある中、青森にクルーズできている欧米系観光客に「爆買い」を期待するのは、そもそも間違いである。

 

 国別の訪日目的に見るターゲット設定の重要性―真のグローバルインバウンドとは
 https://www.d2c-smile.com/201604066860

 

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ただ漠然と訪日外国人を誘致するのではなく、どの国からどんな層に来てもらうのかを明確にした上で、それに合った観光・プロダクト戦略を立案すべきだ。その戦略にマーケットインの発想をプラスし、海外の観光客を呼び込むためには何が彼らに最も響くのかを分析した上で、どんなメッセージを送るべきか、どんなコンテンツを発信していくべきかを考査した上でインバウンド戦略に活かした方が、正しいターゲット設定とプロモーション設計ができるのだ。

 

一見当たり前のことを言っているように聞こえるが、いままで多くの企業や地域、自治体が取ってきたプロダクトアウトの戦略とは、180度の方向性が違う。
外国人の視点に立ってそのニーズに合致するパワーコンテンツを掘り起こすことが、誘客の突破口となり起爆剤になることもある。外国人視点の活用においては、日本に留学・在住する外国人を積極的に活用することも一つの手だろう。

 
 

鹿せんべいで3倍の売上に!インバウンドもモノからコトへ

観光庁の調査によると、昨年の訪日客の6割がリピーターだ。ビザの発給条件の緩和などもあり、リピーターが今後さらに増える公算は大きい。

 

日本には世界遺産だけでも19か所あり、インバウンドにとって未開拓の資源がまだ多くある中、15年に3兆4700億円に達したインバウンド消費の勢いを持続させるには、訪日客層別に、モノからコト(サービス、体験などを含め)、都市からローカルへと、トレンドに合わせたサービス提供が不可欠だ。

 

春先以降、1人当たりの買い物額は前年比で減ったが、訪日外国人数は伸び続けており、消費の裾野はむしろ広がったと言えるだろう。
訪日客のリピーターが増えることによって、支出の対象はモノから体験やサービスなどのコトへ、消費する場所は大阪・京都などの典型的な観光スポットから奈良・高野山といった歴史的な観光地へと拡大していることからも、工夫次第でまだまだインバウンドの需要が続く可能性がある。

 

例を挙げていうなら、奈良の観光といえば東大寺や春日大社などを思い浮かべるが、「アジア系の観光客には、野生の鹿に鹿せんべいをあげるのが人気」だ。
鹿せんべいをあげた経験談や写真、鹿せんべいをあげるる際の注意事項が意外にも反響を呼び、自分も体験してみたいと奈良を訪れるきっかけにもなってるようだ。

 

実際に、近鉄は京都・大阪・奈良の3都を結ぶインバウンド向け周遊券を販売しており、15年度の取り扱い枚数は14年度の3倍近く増加している。

 

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先で述べたように、一生懸命プロダクトアウトのコンセプトでは古都の奈良を売り込もうとしても響かなかったのに、野生の鹿と触れ合えるという外国人のニーズに合ったパワーコンテンツをきっかけにその他のコンテンツを巻き込むことによって、相乗効果を生み出すことができるのだ。

 

同じことが訪日中の消費にも言える。今までお買い物リストや口コミだけで、商品を購入していた訪日客にも少しずつ変化が現れはじめているようだ。
人気の銘柄をとにかく購入するだけだった化粧品は「使い方を教わる」「メイクをしてもらう」といった体験を通じて、より自分に合うものを選ぶ傾向が強まり需要が多様化し始めている。

 

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このように同じ成功体験を他の地域やプロダクトで再現することは可能だが、そこにプロモーション対象地域のローカルの視点による掘り起しが必要であり、ローカルに詳しい広告代理店の知見も不可欠だ。もっと欲をいうと媒体や国に特化してではなく、年間を通して戦略を立て、グローバルで有効なプロモーション設計を一緒に出来るパートナーを作ることができれば、海外消費層のトレンドをより先取りし、ビジネスチャンスを掴むことができるだろう。

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