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2018/03/09
2018/03/09

「デジタル時代のストーリーテリング ~共感を生む物語の創り方とは?~」CODE Digital Creative Academy Vol.2 レポート

 

デジタルを介して創造した「体験(エクスペリエンス)」により、成功したマーケティングコミュニケーション事例を顕彰する「コードアワード」。コードアワード事務局は、デジタルマーケティングやクリエイティブに関わるすべての方に向け、トップクリエイターたちのお話から業界の今と未来を考えるセミナーイベント「CODE Digital Creative Academy」を開催しています。

 

第2回は「コードアワード2018」から追加される「オンラインフィルム部門」の新設を記念し、「デジタル時代のストーリーテリング 〜共感を生む物語の創り方とは?〜」をテーマに2月9日(金)に開催いたしました。& Co.の横石崇氏をモデレーターに、話題の映像を手掛ける次世代のクリエイターとして電通の越智一仁氏、TBWA HAKUHODO/CHOCOLATE Inc.の栗林和明氏、CEKAIの井口皓太氏をお招きし、ヒット動画を生み出す手法から、トップクリエイターが今注目する動画まで、多角的な視点からクリエイティブの秘訣に迫ります。

 

(左から)
株式会社電通 越智一仁氏
TBWA HAKUHODO/CHOCOLATE Inc. 栗林和明氏
CEKAI 井口皓太氏
& Co. 横石崇氏

 

 

「ンダモシタン小林」に見る、「大驚嘆」と「大共感」

& Co. 横石崇氏

 

今回のテーマは「デジタル時代のストーリーテリング ~共感を生む物語の創り方とは?~」。横石氏はコトバンクによる用語解説を引用し、「ストーリーテリングとは、伝えたい思いやコンセプトを、それを想起させる印象的な体験談やエピソードなどの“物語”を引用することによって、聞き手に強く印象付ける手法のこと。語り」と定義。同時に昨年のサウス・バイ・サウスウエストにおいて、「もっとも多くテーマとして挙げられたのが、この『ストーリーテリング』です」と、その重要性を強調しました。

 

電通 越智一仁氏

 

受け手に強い印象を残すため、業界のトップクリエイターたちはどのようなストーリー作りを意識しているのか。越智氏は「物事への光の当て方」をキーワードに挙げ、自身が手掛けた宮崎県小林市のPR動画を紹介。「これは僕の地元である小林市の“方言”に光を当てた動画です。聞き取りづらい方言も『フランス語に空耳するよね』という演出を加える、つまりは光の当て方を変えることで、多くの人にとって楽しいものになります」と、アイデアの源泉について打ち明けられました。

 

 

宮崎県小林市のPR動画「ンダモシタン小林」。2018年2月現在、240万再生を超える

 

また、「光の当て方への工夫はWeb動画に限らず、マス広告にも言えること」と前置きしながら、とりわけWeb動画において重要となるのは「ドキュメンタリー化とデリバリー化である」と指摘。「これまではフィクションを作った上で、メッセージを伝えればよかった。けれどWebの世界にはリアルな事象が多いため、ユーザーはフィクションを信じる感覚が麻痺しつつあります。そこで重要となるのが、リアリティの追求です。リアリティを持たせた上で、短い尺や、一言の表現など、より伝わりやすいシンプルなコンテンツが増えている印象があります」と、バズる動画の共通点を分析します。

 

動画のみならず、様々な案件を手掛ける越智氏が導き出した7つのチェック項目

 

では、シンプルなコンテンツ作りをするに当たり、どのような“光の当て方”を心掛けるべきか。越智氏は欠かせない要素として「大驚嘆」と「大共感」を挙げ、この2つを内包する要素として「組み合わせ、裏切り、コンテンツ、新発明・新発見・ニュース、動画外の体験、本音、○○愛、あるある、機能・利便性、お墨付き」の10項目を紹介。これらを組み込むことを意識した上で、さらに徹底すべき7項目をフローチャートにしてご紹介くださいました。

 

先の動画にも「方言」というワンワードに集約されるシンプルさや普遍性、思わず引き込まれる語感の響きが取り入れられ、最後には「大驚嘆」を引き起こす裏切りが待ち受けています。越智氏のバズ動画とフローチャートから、まさに“バズの法則”が浮かび上がるのではないでしょうか。

 

 

拡散欲の刺激で勝負する「バズフォーメーション 4-4-3」

次にお話しくださった栗林氏の肩書きは、ずばり“バズマシーン”。クリエイター個人の感性によって作り出すクリエイティブがある一方、栗林氏は膨大な動画を視聴することによる傾向分析から、バズ動画を生み出します。その手法を「6つの原則」と「80の切り口」からチャート化し、媒体の特色ごとにマッピングした栗林氏による「バズのツボ *1」は、今や、多くのクリエイターの指針となるほどです。

 

「バズのツボ」にある要素が盛り込まれた、栗林氏による動画
さまざまなメディアで拡散を続け、総再生回数は3600万にもなる

 

しかし栗林氏は「これらの要素を組む込むこと以上に大事にしているのが、傾向分析を続けることです。そして『この動画は、こういう要素によって話題になっている』と、常に説明できる状態にあること」と明言。栗林氏は、自身の絶え間ない分析から導き出された新たなるマップもご紹介くださいました。それがユーザーの「シェアしたい」という思いに訴えかける「刺激すべき4つの欲求」と、その前後段階における重要項目をまとめた「バズフォーメーション 4-4-3」です。

 

栗林氏が新たに開発した「バズフォーメーション 4-4-3」

 

栗林氏は「バズを目指したときに陥りがちなのが『とにかく面白いものを作れば流行る』という偏見です。面白さはもちろん重要ですが、シェアを引き出しているのは、面白さに付随する『誰かに伝えたい』という欲求だと考えます」と指摘。その欲求を刺激する要素としてマップに示されているのが「共振欲、表現欲、賞賛欲、啓蒙欲」の4つです。「競合コンテンツがあふれるWebの世界において、面白さだけで抜きんでることは、めちゃくちゃ難しい。けれどシェアしたい欲求を刺激することができれば、面白さが足りなくても勝てるはずです」と、新たな指針を打ち出しました。

 

TBWA HAKUHODO/CHOCOLATE Inc. 栗林和明氏

 

また「どんなに有益な情報であっても、信憑性の疑わしいサイト発信の情報では、啓蒙欲を刺激されるに至りづらい」と、まず越えるべき「4つの壁」についても言及。さらにチャートには、拡散したい欲求を刺激できたとして、シェアされやすい手法を取れているのかを問う「3つの伝達形式」も示されています。栗林氏が提唱する要素を踏まえた上でバズ動画を見直せば、動画に隠された“拡散される理由”にハッとさせられるはずです。

 

 

「無限ループ」という快感が繰り返しの視聴を叶える

次に井口氏は、自身が手掛けた「ナイキ エア ヴェイパーマックス」のプロモーション動画を紹介しながら、ストーリーテリングへの考え方についてお話しくださいました。この動画は〈Nike〉の依頼により、「FUTURE OF AIR」という共通キーワードのもと、各国のクリエイターが制作。日本での依頼を受けたのが井口氏ですが、「“空気”というフレーズから連想されるのが軽さやジャンプ。けれど“日本の未来”を考えたとき、それはやってはいけないと思った」と、より“日本らしさ”に重きを置いた発想に言及。

 

CEKAI 井口皓太氏

 

では、何をテーマに動画の制作を進めたのか。井口氏は「戦後の日本に多くの西洋文化が流入してくる中、それに抗うように生まれたのが暗黒舞踏です。バレエは脚の長い西洋人のものという意識がある中、農耕民族である日本人は短い脚で大地を踏みしめる。暗黒舞踏は、その力強さを表現しています。つまり日本における“未来の空気”とは、軽やかさや高いジャンプより、重力に沿って大地を踏みしめる姿にあると考えました」と、日本発祥の前衛芸術である「暗黒舞踏」をテーマとしたことを明らかにしています。

 

井口氏が手掛けたプロモーション動画「『先』FUTURE OF AIR」

 

さらに井口氏は、グラフィックデザインという手法からクリエイターとしての歩みをスタートさせた自身の経歴に触れ、「グラフィックデザイナーの仕事は、『理由は分からないけれど、なんだか気持ちいい』という感覚を提供することです。その意識は映像を作る上でも変わりません」と、映像制作における最終目的についても明言。

 

動画のアイキャッチとして登場するロゴにもストップモーションの技術を用い、
不思議と感じる視覚的な気持ちよさを表現している

 

「なんだか気持ちいい」を表現するために井口氏が多用しているのが、GIFが有する概念です。「GIFには無限ループの世界観がありますが、〈Nike〉の動画にも同じ概念を用いています。ヘッドピースを装着した舞踏家が無限に回転しているような、視覚的な気持ちよさ。実際には一定の角度で静止した状態を一コマずつ撮影し、それらを繋げることで表現していますが、このループには延々と見続けたくなる気持ちよさがあるはずです」。井口氏特有とも言うべき“無限ループ”という表現手法に、つい何度も再生したくなる仕掛けが隠されていたのです。

 

 

3人の気になる動画から浮かび上がった「モキュメント」

3人のお話から、まさに三者三様のクリエイティブが明らかになりましたが、セミナーでは3人が選ぶ「最近、気になっているムービー」も紹介。一般ユーザーがYouTubeやTwitterに投稿した動画から大手企業によるコマーシャル動画まで、多様な観点から15以上もの動画が紹介されましたが、一つの傾向として栗林氏が挙げたのが「モキュメント」というフレーズです。

 

それぞれの「最近、気になっているムービー」を紹介

 

「モキュメント」とはフィクションの出来事に基づき、それがあたかも事実のように、つまりはドキュメンタリー風に見せていく映像手法のこと。この手法自体は、けっして新しいものではありませんが、今回のセミナーで言及された「リアリティの追求」に直結する概念です。Webという無限の世界にあらゆる情報が氾濫し、いったい何がリアルなのか、ユーザーの目は厳しくなるばかりです。しかし厳しくなればこそ、この“リアル”にまつわる要素が、一つのキーワードになるのかも知れません。

 

以上、今回も2時間に渡り、様々なお話が展開された「CODE Digital Creative Academy」。
次回は3月13日(火)、テーマは「体験(コト)のデザインとは何か。——デジタルマーケティングと結びつくときXDは一気に花開く。」です。次回も業界のトップクリエイターをお招きし、有意義な学びの時間をレポートいたします!

 

*1 バズのツボ
https://www.advertimes.com/20160824/article232291/2/

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