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2017/02/02
2017/02/02

出版記念セミナー『顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン』ダイジェストレポート

 

“ビジネス・パーソン向けのUX(ユーザーエクスペリエンス)解説書”として先月12月27日にマイナビ出版より発行された『UX × Biz Book ~顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン~』
国内でも数少ないUXデザインによるビジネス価値創出の考え方や取り組み方、手法論について、多様な分野で活躍する専門家たちが多角的に掘り下げた書籍となっています。

 
先日1月12日に開催された本書籍出版記念セミナーには、各企業において先鋭的な取り組みを実践する著者たちをパネラーとして招き、約3時間に渡って様々な視点からUXとビジネスを語るパネルディスカッションが行われました。書籍には収録されなかったエピソードまで語られたディスカッションの様子を、ダイジェスト版でお届けします。
 

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◆上段(左から)
明海 司氏(株式会社D2C)、奥谷 孝司氏(オイシックス株式会社)、井登 友一氏(株式会社インフォバーン)、川田 学氏(株式会社メンバーズ)、坂本 貴史氏(ネットイヤーグループ株式会社

 
◆下段(左から)
橘 守氏(株式会社エクスペリエンス)、田平 博嗣氏(株式会社U’eyes Design)、塚本 洋氏(株式会社メンバーズ)、萩谷 衞厚氏(株式会社エンゲージメント・ファースト)、原 裕氏(株式会社エンゲージメント・ファースト CEO)
※五十音順

 
 

第一部:リアルビジネスでのUXの活用

第一部のテーマは「リアルビジネスでのUXの活用」。パネリストとして奥谷孝司氏(オイシックス株式会社 COCO)、川田 学氏(株式会社メンバーズ UXデザイナー、HCD-Net認定 人間中心設計専門家)、萩谷衞厚氏(株式会社エンゲージメント・ファースト)が登壇。原 裕氏(株式会社メンバーズ 執行役員、株式会社エンゲージメント・ファースト CEO)がモデレーターとなり、現場目線でのディスカッションが行われました。
 

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ユーザーに対し、いかに良質なエクスペリエンスを提供するのか
UXをデザインするうえで、必然的に掲げられるキーワードが「ユーザー視点」、あるいは「顧客視点」

 

原氏は、とりわけ突出したエクスペリエンスを提供する企業として、スティーブ・ジョブズ健在時の米・アップル社を挙げ、「マスに対する一般的なリサーチから導き出される仮説ではなく、ロイヤリティの高い顧客の満足度を重んじたからこその成功です。ロイヤリティの高い顧客に対するエクスペリエンスを重視しなければ、『Wow!』と言うほどの高評価は得られない」と指摘します。

 
また、かつて所属した株式会社良品計画において、アプリ「MUJI passport」の成功からeコマースに新たな形を築いた奥谷氏は、「ECは詳細なデータが得られることから、つい顧客と対峙した気になってしまいますが、そこで見ているのは購買時の数字だけ。継続的な成果につなげるためには、むしろ買った後のケアが重要になります」と指摘。

 

さらにUXデザイナーとして企業のサービスデザインを手掛ける川田氏は、事業側とクリエイティブ側の連携を重要視し、「顧客に視点を移したUXデザインがあれば、『お客さまに良質を届けたい』という、2業間における合意形成を築くことができます」と語りました。

 
これらの話から見えてきたキーワードが「エンゲージメント」、つまり「顧客との結びつきや絆」です。

 
大企業を中心にコールセンターの構築や運用を手掛けてきた萩谷氏は、銀行のスマホ用サイトを経由し、コールセンターに問い合わせ行動を取ったユーザーを対象とした満足度調査の結果を発表。結果は銀行ごとにスコア化されていますが、「高いスコアを出している企業は、顧客に対してパーソナライズ化した対応ができているだけでなく、WEB部門とコールセンター部門の連携が取れている銀行です」と分析しています。

 
調査結果における“パーソナライズ化した対応”とは、UXデザインの根幹たる「ユーザー視点、顧客視点」に言いかえることができますが、「WEB部門とコールセンターの連携」とは、川田氏の述べた「2業間の連携」につながります。対ユーザーだけではなく、企業間に貫かれる信頼関係、いわばエンゲージメントの重要性も浮き彫りになったのではないでしょうか。
 
 

第二部:B2BビジネスにおけるUX

第二部のテーマは「B2BビジネスにおけるUX」。橘 守氏(株式会社エクスペリエンス 代表取締役)、明海 司氏(株式会社D2C 上席エキスパート)のお二人が登壇しました。

 

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株式会社エクスペリエンスの発起人である橘氏は、その社名が示す通り、「ユーザーに最大のベネフィットとエクスペリエンスをもたらす顧客基点のサイト作り」をモットーとしています。そんな橘氏がUXの定義として「最もピンときた」という解釈は、(株)ビービット遠藤氏の提唱する「顧客が企業を通して体験したことのすべて。その加算的、総合的な主観的理解」だと語りました。

 
たとえば同じ企業のうち、販売員がどれだけフレンドリーだったとしても、コールセンターの対応に何らかの不備があれば、顧客はその企業全体に嫌悪感を抱くこととなります。そのため、顧客に対して良質なエクスペリエンスを提供するためには、「(部署ごとの)部分最適化ではなく、全体最適化が重要。企業として顧客を見るのではなく、顧客がどのように自分たちの企業を見ているのか、というスタンスを取ることです」と指摘します。

 
長くコーポレートブランディングを手がける明海氏も、橘氏の言う「最適化」というフレーズを用いながら、B2B戦略におけるUXデザインの重要性を説きます。「いかに顧客にフィットしたカスタマイズを提供し、利益を出していくかがB2Bビジネスです。UXが意味するのも『ユーザー一人ひとりに対する体験の提供』ですから、どちらも意味するところは『個別最適化』という面で、非常に相性がいい」。

 
また明海氏は、「UXに続き、今年は『EX(エンプロイ・エクスペリエンス)』という言葉も出てくるかも知れない」とも分析しています。「エンプロイ」、つまり企業の実態を知る従業員の体験そのものが、企業のブランディングに直結していく。これも橘氏の語る「企業における全体最適化」につながる発想です。

 
では、私たちが直面するデジタルメディアにおけるUXデザインを描くときには、何が重要となるのか?

 

橘氏は「自社サイトを自分でよく知る。その一言に尽きる」と言い切ります。そのためには「意外と計測タグを入れ忘れているパターンも少なくない」(橘氏)と言うように、あらためて直帰率を始めとした自社サイトの解析ログを見直すと同時に、スマホ向けに最適化されたレスポンスタイムにおける競合他社との比較、さらに顧客視点に立ったグローバルナビゲーションについても指摘しました。
 
 

第三部:UXデザインを起点としたイノベーション創出

第三部の「UXデザインを起点としたイノベーション創出」には、坂本貴史氏(ネットイヤーグループ株式会社 UXデザイナー)、井登友一氏(株式会社インフォバーン 取締役 執行役員 京都支社長)、田平博嗣氏(株式会社U’eyes Design 専務取締役、工学博士、相模女子大学学芸学部非常勤講師)が登壇。塚本 洋氏(株式会社メンバーズ)がモデレーターを務め、最後のパネルディスカッションが行われました。

 

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そもそも「イノベーション」とは何なのか。
イノベーション創出支援のデザインコンサルを手がける田平氏は、「新しい生活体験であることが条件。ただし利用者が楽しいと思うだけでなく、社会にとって有益であることが重要です。その結果、新たな体験が習慣になり、さらに文化になり得る。いずれは誰も気にしなくなり、日常の当たり前になり得る製品やサービスが、イノベーションではないでしょうか」と位置づけました。また、それを叶えるためには「常識を疑うことともう一つ、自社の資源や出来上がった縦割り社会だけで考えず、あらゆるリソースを求め、他社と連携すること」を挙げています。

 
UX戦略と運用に従事する井登氏も、田平氏と異口同音に「最初は奇異に捉えられていたものが、気付けば普通になっていることにイノベーションの価値がある」と定義。では、どのようなUXデザインからイノベーションが生まれるのか
田平氏は「マーケティングでよく使われる『インサイト』。『洞察』と訳されますが、顧客の行動を洞察するには調査だけではダメ。表層だけでなく、過去の経験や生まれたときの生活環境、文化背景、価値観や思い込みまで、すべてをすくっていかないと、深い洞察は生まれません」と指摘します。

 
また、この深い洞察力を生み出す事例として、IA/UXデザイナーである坂本氏は「たとえば、ユーザーインタビューをしたとき。意外にも関係のない雑談から何かが見つかるということが少なくありません。実は自分のために補聴器を付けるのではなく、『聞きとりづらいだろうと、相手に気をつかわせてしまうのが辛い。だから“相手のために”補聴器を付けるんだ』という雑談からも、新たなインサイトが生まれます」と打ち明けました。
 
 

サービスデザインから企業ブランディングまで―UXによるビジネス価値理解のために

以上のディスカッションを受け、第三部のモデレーターを務めた塚本氏は、「あらゆるリソースから、どのようにエクスペリエンスが提供できるプロダクトに落とし込めるのか。そこに至るまでに解析結果や意見に発想、そうしたリソースを引き出せる人間こそ、プロフェッショナルなのではないでしょうか」と総括。『UX × Biz Book 〜顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン〜』の特徴でもある、多様性と実践に富んだUXとビジネスについて語られた本セミナーを締めくくりました。

 
BtoCにおけるサービスデザインだけでなく、BtoBにおける企業ブランディングまで、あらゆる領域において様々な視点からその重要性が語られたUX。その根底には、それぞれの領域で向き合う顧客との関係をいかに築くかということに集約されていました。

 
多面的かつ複合的な切り口でUXを解説された本著は、あらゆる職種に従事する全てのビジネス・パーソンにとって、UXによるビジネス価値の理解を広げる一冊となるのではないでしょうか。
 
 

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UX × Biz Book 顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン|マイナビBOOKS
https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=62979

 
 

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