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~アプリ内ブラウザによる行動履歴分断の現状と対策~
2015/08/04
2015/08/04

クッキーを超えるクロスデバイス時代のアドテクノロジー
~アプリ内ブラウザによる行動履歴分断の現状と対策~

 

7/23にD2Cスマイルでも取り上げた調査レポートにもありますように、スマートフォン経由のトラフィックの拡大や、Google社の「モバイルフレンドリーアップデート」への対応に伴い、BtoC企業のスマートフォンサイト開設率が大幅に上昇しました。
その一方で、スマートフォンアプリの提供率についても、一時期の停滞傾向から上昇に転じています。

 
マルチデバイスが大前提となるデジタルプロモーションにおいて避けて通れないのが、クロスデバイスおよびアプリ内ブラウザによる行動履歴の分断です。
今回は、クロスデバイスで生活者にアプローチするアドテクノロジーの進化についてご紹介したいと思います。
 
 

マルチデバイスの拡大により分断される行動履歴

昨今のアドテクロジーは「枠から人へ」という考え方にシフトしており、「この広告枠だから、この広告」よりも「この人だから、この広告」という広告配信形式が当たり前の時代となりました。
対象のサイトを見たことのあるユーザーに再訪を促すリターゲティング広告、類似ユーザーからデモグラフィック(人口統計的特性)を推定して絞り込む属性ターゲティング広告、ウェブサイトの行動履歴からサイコグラフィック(心理的特性)を推定して絞り込む嗜好ターゲティング広告などが開発されています。

 
高精度なターゲティング広告を実現するためには「サードパーティクッキー」という仕組みが用いられる場合がほとんどです。
「サードパーティクッキー」とは、本来は異なるドメインのサイト間では共有することのできないクッキーを、表示サイトとは別の共通的なドメインから発行することで、複数のウェブサイトから統一的な識別子を共有しています。

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PCのブラウザではサードパーティクッキーを用いた行動履歴の蓄積が行われてきましたが、スマートフォンでは事情が異なります。
スマートフォンにおいては、TwitterやFacebookなどのアプリのなかでウェブサイトを表示する「アプリ内ブラウザ」の利用頻度が高いのですが、アプリ内ブラウザと標準的なブラウザアプリでは利用されるクッキーが異なるため、以下のような行動がなされた場合に横断的な行動履歴の蓄積が行えないという現状があります。

 

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アプリ内ブラウザ利用時とブラウザアプリ利用時で利用されるクッキーが異なることが原因でDMPから「別人」と見なされると、たとえばTwitter内ブラウザから不動産に関するキャンペーンサイトを閲覧していたユーザーに対し、Safariでの閲覧時にリターゲティング広告を配信させることや、Safari閲覧履歴を元に抽出した不動産に興味のあるユーザーに対して、Twitterでインフィード広告を配信するといったプロモーション施策が難しくなります。
 
 

試行錯誤するスマートフォンでの個人識別方法

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以前までのiOSであれば「UDID」であり、Androidなら「IMEI」「MEID」「ESN」と呼ばれるユーザーからの変更ができない端末IDを用いてデバイスの個体識別がなされてきたのですが、プライバシー情報としての懸念もあってiOS6.0からは取得不可、Androidでもパーミッションが必要となりました。
現在審議中の個人情報保護法改正案においては「スマートフォンの端末IDは個人情報に該当しない」という見解が示されているものの、端末IDを利用した場合のレピュテーションリスクは依然として高いものとなっています。

 

端末IDに変わる識別子としてiOSでは「IDFA(IDentification For Advertisers)」であり、Andoroidでは「ADID(ADvertisingID)」と呼ばれるオプトアウトやリセットに対応したアプリ間で共通の広告用識別子が利用可能となっていますが、依然としてブラウザのクッキーとは独立しており、行動履歴が分断されてしまう課題は解決していません。
アプリの初回起動時に、ブラウザアプリを起動させてクッキーと広告用識別子を紐付ける処理も開発されてきましたが、現在はリジェクトされる方向です。

 

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またAppleが発表した『What’s New in iOS iOS 9.0』によれば、最新のiOSであるiOS 9.0から「Safari Services Framework(SFSafariViewControlle)」がサポートされ、アプリとSafariでクッキーやその他データを共有できるようになります。
とはいえ、iOS 9がユーザーに浸透するまでは時間がかかるため、しばらくは試行錯誤がつづくものと思われます。
 
 

クロスデバイス/クロスブラウザを「名寄せ」する各社の取り組み

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ここまでで、スマートフォン内における標準ブラウザとアプリ内ブラウザの行動履歴分断について論じてきましたが、もう少し範囲を広げるとスマートフォンで見たサイトから興味を感じて、PCのサイトで検索するといった行動も考えられます。
Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)を活用したクロスデバイス配信のススメ』によれば、「スマホ向け広告を見た人もスマホでコンバージョンに至ったのは約40%だけで、約55%の人はPCにうつってコンバージョンしている」とのことです。このような行動履歴分断への対策としてクロスデバイス/クロスブラウザ間で同一ユーザーであると判定するために「名寄せ」の技術が求められています。

 
この課題に対応するため、たとえばYahoo!では、検索エンジンのパーソナライズを理由にPCとスマートフォンで共通のアカウントにログインさせたり、ニュースキュレーションアプリの『Yahoo!ニュース公式アプリ』を配信して、これまで分断されていたクロスデバイス/クロスブラウザの行動履歴を紐付ける仕組みを整備して広告配信に活用しています。
Googleでは検索エンジンのパーソナライズはもちろんのこと、Googleアカウントでログインすることで利便性の高まるブラウザやオフィスサービスを無償提供したり、Googleアカウントを必須とするスマートフォンOS(Android)を提供したりと、クロスデバイス/クロスブラウザにおける行動履歴収集の仕組みづくりに余念がありません。

 
大手サービス運営者による独自アカウントを媒介にした「確定的な名寄せ」が行われている一方で、『AdTruth』などのフィンガープリント技術を用いた「推定的な名寄せ」も用いられています。
「フィンガープリント」とはウェブ上から収集可能なOSバージョン、地域、画面サイズなどの情報をもとに推定的に名寄せを行う技術であり、必ずしもクッキーを用いないユーザーの推定を行います。
ウェブ広告配信における「顧客の属性に合わせて精度のよい広告配信を行う」というゴール自体が確率論的なアプローチであるため、必ずしも100%の精度で名寄せ処理を成功させる必要がないという前提があります。
 
 

オフラインにまで広がるクロスデバイス解析の可能性

クロスデバイス/クロスブラウザによる解析は、オンラインの行動履歴を蓄積しようとする試みでしたが、解析の対象範囲はクッキーを超えてオフラインにまで広がろうとしています。

 
Facebookでは2014年にモバイル広告の計測に強みをもった広告ネットワークAtlasを買収しており、「Atlas Tag」とよばれるトラッキングタグをFacebook以外でも配信された広告に入れることでモバイルを含んだオンライン広告全体の計測を行えるようにしており、Atlasのプラットフォーム上で広告主やサードパーティから取得した顧客情報やオフラインの購買データを紐付けることで、クロスデバイス解析の対象をオフラインにまで広げようとしています。

 
アメリカの大手通信事業者Verizonもオンライン広告業に参入しており、日本においても携帯キャリア会社によるモバイル端末情報や共通ポイントカード運営会社などによるオフライン購買履歴など、今後は様々な業種の事業者がクロスデバイス解析のトラッキング機能を提供してオンライン広告業に参入する可能性があると思われます。
 
 

おわりに

いかがでしたか。今回の内容をまとめると以下のようになります。

 
● ターゲティング広告の配信にはサードパーティクッキーを用いた横断的な行動履歴を利用している
● スマートフォンのアプリ内ブラウザとブラウザアプリでは利用されるクッキーが異なるため、行動履歴が分断されてターゲティング広告の配信精度が低くなってしまうという課題がある
● この課題に対応するため独自アカウントやフィンガープリントによる「名寄せ」の技術が開発されている
● 様々な事業者がオンライン広告に参入する可能性について

 
マルチデバイスやが前提となったデジタルプロモーションにおいて、ターゲティング広告の配信精度を高めるためにはクロスデバイス/クロスブラウザでの行動履歴を横断的に取得することが必要になってきます。
 
今後は個々の事業者に分断されていた行動履歴を統合していく動きや、様々な業種からのオンライン広告参入が行われていくのではないでしょうか。
行動履歴の分断を解消するためのアドテクノロジーは日々進歩しており、生活者に対して包括的なアプローチを行なっていくための仕組みを整えていくことが重要になっていくものと思われます。
 
 

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